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低山の高山植物 〜日高山脈記#3/アポイ岳の自然〜

ひたすらアポイ岳の岩石にフォーカスした「日高山脈記#2/アポイ岳ジオパーク」

日高山脈記#3では、アポイ岳登山で体験できる豊かな自然を、写真でレポートしたいと思います。今回目指したのは「馬の背お花畑」という高山植物が多く咲くエリア。七合目付近まで、登り2時間を想定した登山です。

木々がびっしりと根を張る登山道

登りはじめてひと汗かいてきた頃、こんな標示が。

ヴィーナスと書かれると、もうヴィーナスにしか見えないのが人の心理。それにしても、どうしてこんな曲がり方をしたのか。自然の造形に驚かされる。

木々の世代交代を眺める

ところどころに流れる清流を渡りながら進む。

四合目にある水辺にはニホンザリガニが生息していて、観察できるそう。

五合目まで続く森林地帯では、遠くに鹿もいた。

比較的緩やかな登りを1時間ほど歩き、五合目に到着。ここから急に植生が変わり、視界が一気に開ける。

さらに少し登ると海が見えはじめ、遠くに冬島漁港や浦河の町を眺めることができた。

山道の周りは、濃い橙色のヤマツツジが咲き誇っていた。

小さな黄色の花は、ヒロハヘビノボラズ。

長くて繊細な蕊(シベ)が特徴のエゾシモツケ

ここからは、岩肌に咲く姿を見せる高山植物たち。こちらはアポイアズマギク。アポイ岳でもっともポピュラーな種で、中には薄紫色をした花もある。

鮮やかな赤紫のキタヨツバシオガマ。

アポイの固有品種、アポイクワガタ。

密集して咲くチングルマ。

ひっそりと咲いていたミヤマオダマキ。

珍しい高山植物に焦点を当ててはいるものの、個人的には背の低い松の花も美しく感じた。これがやがて松ぼっくりに。

この日は雲が低く、この登りを越えれば「馬の背」に着くという六合目では、視界もかなり悪くなった。

悪天候とはいえ、幻想的な風景。真っ赤な松の花が印象的。

ようやくついた「馬の背お花畑」エリア。本来ならここからが高山植物の見どころになるものの、視界不良から先に進むことは断念。山登りでは諦める勇気も大切。皆さんも、くれぐれもご無理なきよう。

取材ではアポイ岳の高山植物のごく一部しか写真に収めることができなかったものの、固有種を含む花々が見られることはお伝えできたかと思います。ビジターセンターには、現在開花中の花々を確認できるQRコードも用意されていて便利。

そもそもアポイ岳は標高810メートルと、決して高山とは言えない山。ここで多くの高山植物が見られることには、かんらん岩が関係しています。アポイ岳の五合目以降に露出しているかんらん岩は植物の成長を阻害する成分が含まれており、かつ、海に近く霧で夏でも涼しいこと、雪が少なく冬は吹きさらしであること、といった気象条件が重なり、高山植物の宝庫となっているそうです。高山植物には興味があるけど本格的な登山は難しいという方、ぜひアポイ岳に行ってみてください。アポイ岳のかんらん岩取材記はこちらから。「日高山脈記#2/アポイ岳ジオパーク」

アポイ岳の固有種は植物だけでなく、アポイマイマイ(かたつむり)、ヒメチャマダラセセリ(蝶)といった固有の虫も生息しており、ビジターセンターで詳しく解説されています。また、氷河期の生き残りとして有名なエゾナキウサギも、ここでは比較的低地に生息しているそう。姿を見るのは本当に難しいようですが、「キチッ」という声は聞くことができるかも。山中、耳をすませてみては。

ビジターセンターで購入できるポスター。定価500円。

「日高山脈記#1/日高山脈博物館」 

「日高山脈記#2/アポイ岳ジオパーク」