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11月の詩

執雨

わたしのいちぶが行ってしまう
透けるまで焼いた骨にすいこまれ 
きみのあしうらに、なまぐさくはにかみ
くちびるの血を拭きもせず 
きんいろ、とだけおもっていた
枯野のむこうに火薬庫がそびえ 
去年の花火がすきまなく詰まっている
閉じこめないと、もがくことすら
燃えなかった、きのうに圧され 
そのどぎつい水晶林へと
踵のわれめを押しひらいていった

きみのあしあとを、腐るまでみていた
膿をのみほし、ぶよぶよの心臓の
ひどく重たいのを抱えてあるきだす
戻っていく場所へと、二秒後をくりぬき
あしくびの縄をほどくと 
くろい血の散るのはわかっているのに
進みやまない飢餓のふくろだ

わたしのぜんぶが行ってしまう 
夜から夜へ、押したおした記念碑を
踏みしだく、あしうらの色を報告せよ 
あしのつめ食い込む、なまにえの泥沼に 
しんだ石、しにかけた石が溺れる 
抱いて帰った石を、アルコールランプで乾かす 
まるで燃えつかない青い火へ 
抜けおちた歯を、つぎつぎと投げこむ
こわれかけ、という均衡、でしか
あいぶできないのか、と 
石がうわめで見る

煙であれば、とわに並んでいられたが 
人はじんせいをやらねばならない 
じんせいなど片手ほどでいいのに 
きみが部屋に入れた誰かが 
胸ポケットのふちを焦がし
ことし初めての灯油が、するどくかおる 
打ちくだいても、貝ボタンになれない 
われゆく眼底に、壁のレンガはぜんぶ色違いで
平均すると、あの色になるはずの、あのいろ ……

噛みちぎった爪を、ひかるまえに拾う
きみはいま、じんせいをしている
レンガはぬれて、茶ひといろになる
すきまもなく  
からだのつくるすきまは、みな雨に似すぎて
もう煙になることもできないようだ

詩 中筋智絵
写真 haruto_pao__

中筋智絵(なかすじ ともえ)
北海道在住。
詩集『夏虫の巣』 第14回中原中也賞最終候補。
2025年 詩篇「札幌 払暁」 第1回道産詩賞大賞。
2025年、詩集『三季』刊行。
今年は「拓地詩会」を立ち上げるなど、すっかり合評の楽しさにはまりました。
夏の終わりの日高コズミック祭りは、今年一番の美しい思い出です。
(X: @tomonaka7728)

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