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思い出は日高に⑦ さくらのパン

私の母方の祖母はパンが大好きです。その子どもである母もパン好きに育ちました。そしてやはり私も、小さい頃からパンが好物でした。

朝食は必ずパン。真ん中から二つに千切れる食パンをトースターで焼き、マーガリンをきっちり塗って食べます。舌の上にじゅわっと染みいる塩味。そこに牛乳を流し込めば、ああ至福。

中学生になってからは玄米食パンが登場しました。スーパーで売られていたものを母が「発見」したのです。玄米のプチプチした食感が心地よく、毎日焼きたてなのでやわらかく、これは焼かずにそのままマーガリンを塗って食べます。トーストした食パンとはまた違ったおいしさがあってやみつきになりました。

学校から帰ってくると夕飯までの間に小腹がすきます。茶の間のテーブルの上にはだいたいなにかしらのお菓子があって、それで空腹を満たしていました。そこに時々「さくらのパン」があると色めき立ったものです。

昔、静内町役場の前あたりに「手作り工房さくら」というパン屋さんがありました。いつ頃から買い始めたかは覚えていないのですが、わが家はみんなそのお店のパンが好きでした。

そぼろのようなものが表面にたっぷりまぶされた、バターの香り豊かなパン。桜の塩漬けがのったシンプルなあんぱん。中でも忘れられないのは、オレンジピールが練り込まれた生地を細長く成型したオレンジパンです。口に含むとオレンジの香りが広がり、やさしい甘さでぺろりと平らげてしまいます。

母親の買物についていった帰り、たまにさくらへ寄るのも楽しい時間でした。パンだけでなくクッキーも種類豊富で、私たちはだいたいココアとプレーンの味がマーブルになったもの、オレンジピールが入ったもの、チョコチップが入ったもの、ココア生地にスライスアーモンドがたっぷり入ったものを買っていました。

進学を機に私が静内を出たあと、しばらくするとさくらはなくなってしまいました。もうあのパンやクッキーが食べられないのか……と長年残念に思っていたのですが、なんと2023年8月から、新ひだか町立静内病院内に移転オープンしていたとのこと!

先日、父にお願いし、数種類買って写真を撮ってもらいました。

私が知っている当時はなかった(?)塩パンのような商品もありますが、オレンジピールのクッキーは記憶そのままでした。ココアのクッキーは、昔は細長い形をしていたような。それでも懐かしさがあります。

実は私、数年前に小麦アレルギーになってしまい、小麦製品を食べると顔ににきびが出てしまいます。普段はできるだけ小麦製品を摂らないようにして、たまの贅沢で「ここぞ!」という時に食べるのですが、今月末からしばし地元に帰るので、久しぶりにさくらのパンは食べたいなと思っています。

ここからは完全な余談なのですが、このお店を知っている読者の方は、「さくら」がどんなイントネーションで頭に浮かびますか? 私は、お笑いコンビ・オードリーの「春日」の発音で呼んでいます。1文字目にアクセントが来る感じ。

どうしてこんなことを書いたかというと、少し前に自宅で夕飯の支度をしていた際、私がなにげなく「包丁が~」と言うと、夫に「ほうちょう…?」と聞き返されたんです。文字なのでものすごく分かりにくいと思いますが、私は「ピーマン」のように、一文字目にアクセントをつけて包丁と言っていたのに対し、夫は「ほうとう」のイントネーションで発音していました。北海道民は一文字目にアクセントが来ることが多いとどこかで聞いたことがあり、関東出身者との違いを顕著に自覚した場面でした。

「さくら」も、花の「桜」とは違って、私はなぜか昔から一文字目を高く発音してしまいます。

「散らないさくら」

まる しかく さんかく
いろんなパンとクッキー
あまい しょっぱい
かたい やわらかい
今日の気分に合わせて選ぶ

学校で恥ずかしい思いした
まる しょっぱい かたい
本の続きを早く読みたい
さんかく あまい やわらかい
喧嘩した弟と仲直り
私のオレンジパンをあげよう

さくら さくら
散らないさくら
けれど手をつけるとあっという間
お腹におさまってしまうから
茶の間に持ち帰って
牛乳を用意したら
少しだけ
眺める時間をつくる

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