『日高に来た俺の物語』三章
『歯医者だった場所で』
新冠に、 Atelier &Restaurant NIKAPって場所が最近できた
今は革とアクセサリーの工房とレストランが一緒になった場所だ。
地元の人も来るし、
遠くからわざわざ来る人もいる。
でも、最初からこうだったわけじゃない。
ここは、歯医者だった。

待合室があって
診察室があって
いかにも病院って感じの建物だった。
そこに機械を運び込んで
少しずつ手を入れて
少しずつ景色が変わっていった。
一気に変わったわけじゃない
初めて新冠に来た時に連れて来てもらった時の記憶しかない。
もちろんその時は、歯医者の面影があった
気づいたら何かが増えていて
また少し形が変わって
また少し景色が変わる。
そんな感じで、
この場所は少しずつ変わっていった。

最初に始まったのは、革の工房だった。
今年で4年目になる。
最初は、レストランなんて話は全くなかった。
ただ、ものづくりをする場所があって、
人が出入りする場所で Hi-MAG の拠点として使えたらねなんて話していた。
去年の初めくらいだったと思う。
「ここでレストランもやるか」
そんな話が出た。
ちょうどその頃、
新冠の高速道路が開通することになっていた。
この町にインターチェンジができる。
それはこの町にとって
大きな変化だったと思う。
その開通に合わせるようにして、
2026年2月22日。
NIKAPもオープンした

オープンから約1ヶ月が経った
俺はそこで、
フロアマネージャーとバーテンダーをやっている。
カウンターに立っていると
いろんな人が来る。
地元の人もいれば、
遠くから来る人もいる
初めて来る人もいれば、
何度も顔を見せてくれる人もいる。
こういう場所って、
田舎にはないと思ってたって言われることもある。
でもそれを、
地元の人がこの町につくった。
「田舎だから出来ない」
そういう概念を、
軽く壊してくれた気がしている。
東京でバーテンダーをしていた俺が言うのも変だけど、
ふとした瞬間に、
東京よりいいなと毎度思わせられる
新冠には
自由に集まれる場所っていうのが
気づけばほとんどなくなっていた気がする。
だからなのか
「こういう場所ができてよかった」
そう言ってくれる人も多い。
ここにいると、
こんなに人がいるんだなって思うこともある。
それと、
ここに立っていると
飲食に対しての気持ちも少し変わった。
飲食を始めて、もう10年目になる。
それなりにカウンターの中で
いろんな景色を見てきたつもりだった。
でもここは、今までと違う。
工房があって、
仲間がたくさんいて、
いろんなことを共有している。
気づいたら
みんなが一丸になる瞬間がある。
あの空気は、
なんかすごく気持ちいい。
今までの物は何だったのか考えさせられる事もある
それとはまた違う感覚もあって、
正直、すごく楽しい。
改めて思う。
飲食をやっていて、
よかったなって。

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詩『この場所で』
つくる場所があって
食べる場所があって
そのあいだにいる
始めて
続けて
気づけば
ひとつの場所になっている
音と声と笑っている人がいて
それを
カウンターの中から見ている
ただのお店じゃなくて
誰かの
居てもいい場所みたいなものだと思う
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歯医者だった場所で、
俺は今、カウンターに立っている