Hi-MAG北海道・日高の
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すぐに何かが開催される

2025.05.01

 今年のしずない桜まつりは曇天と雨の日々で、木々がようやく春の色に染まりつつある日。寒さに震えたあと、みんなで焼肉を食べた。

 おいしいものをいっぱい食べることができるのは、食いしん坊のわたしにとって実にありがたいことである。しかし夕食の際に、Hi-MAG の方々によって何かしらの大会が唐突に開催されるときがあり、罰ゲームがこわくて緊張してしまう。

 普段は札幌に居を構えていて、はじめて日高を訪れたのは今年の一月。わたしは図々しい詩人なので、それ以来、毎月のように訪れてはおいしいものを食べ、温泉にはいり、おしゃべりをしている。こんなに居心地がよいのは、出会うひとたちの魅力ゆえだろう。

 でも、すぐに何かが開催されるから、ちょっと戸惑う。モルック大会、一発芸大会や深夜の映画観賞大会。それらに対して、ちょっと戸惑いながらも楽しんでいる自分がいる。まるであたらしい自分にも出会ったみたい。

 この日は「どうしても許せないこと」や「最後の晩餐に食べたいもの」など、思いついたひとから挙手をし、回答がもっとも遅かった者が、罰としてモノマネをするゲームがはじまった。わたしはモノマネをしたくない一心で、いつもは積極的に発言しないのに、素早く手を挙げて答えていった。

 「そんなにモノマネしたくないの?」と御徒町さんが言い、なぜだか「みんなで三角さんのモノマネをやろう」という流れへ。『三角みづ紀選手権』がはじまった。

 わたしは本人であるのでモノマネをしなくていいのだけれど、そわそわしてくる。審査委員として夫の小林大賀を任命した。同じ言葉を発するというルールも設けた。そのほうが似ているかどうか判断しやすいから。

「はじめまして、三角みづ紀です」

 ひとりずつそう言っていく。もう恥ずかしくってたまらない。知らぬ間に自分が観察されているって知るのは、ほんとうに恥ずかしい。まばたきの多さ、声の小ささ、間合いと動き。照れを隠すために箸を動かしつづけた。優勝はパイセンこと廣島さんに決まった。

 「明日から生きづらい」と言ったら、そんなに!?と驚かれたが、選手権を終えて、めいめいにその場にいる誰かの特徴や動きを真似しはじめた。「たしかに!」や「似てる!」といった声が飛び交うなか、Big Boyアユムくんが「明日から生きづらい」と言った。

 そうでしょうそうでしょうとひとりで頷きつつ、罰ゲームよりもこわい遊びであると心より思った。まずはまばたきを減らし、はっきりと大きく発声して生きていこうと誓った。焼肉はおいしかった。